
Rho Fiera Milano大展示場エントランス

Milano Design Week 2025 参加レポート <前編>
2025年4月8日から13日まで開催された、第63回Salone del Mobile. Milano(以下、ミラノサローネ)に弊社イルデザインも2年ぶりに参加して参りました。ミラノサローネ公式newsletterの情報によると、本年来場者数は照明を主とするエウロルーチェ(サローネ国際照明見本市)が隔年開催された一昨年2023年時と並ぶ302,548人を記録し、国別来場者ランキングでは1位が中国、2位がドイツ、そしてスペイン、ポーランドと続き、日本は20位から13位に上昇。2,712人が来場したそうです。全体からすると1.6%と少なく、やはりヨーロッパからの参加数が全体的に安定していることが伺えましたが、実際に会場を歩いていた時の感覚としては、やはり2023年時よりも、日本語を耳にする回数は増えた気がしました。
(※来場者データはミラノサローネ公式newsletter「プレスリリース|Salone del Mobile.Milano 2025 閉幕リリース」より。)

Helsinkiヘルシンキ・ヴァンター国際空港
私たちは今回も一昨年参加時と同様にFinnairにて、ヘルシンキ経由・北極ルートでミラノ、マルペンサ空港に向かいました。そして、Rho Fiera Milano大展示場での「Salone del Mobile.Milano」(ミラノサローネ)と、Saloneの”外側”の意で、ミラノ市内各所で開催される「Fuorisalone」(フオーリサローネ)、この両方を合わせた「Milano Design Week」(ミラノデザインウィーク)を双方向から体験すべく、会場と市内の中間あたりに位置するホテルを拠点に選びました。マルペンサ空港からマルペンサ・エクスプレスという列車で30分のMilano Bovisa Politecnico(ミラノ ボヴィザ)で下車、そこから車で10分弱のHotel Double Tree by Hilton Milanへ。こちらは一昨年滞在したホテルと同系列だったので勝手を知っている上に前回よりも各ポイントへのアクセスがスムースで大変利用しやすい拠点となりました。

「The Northern route diploma(北極航路通過証明書)」
FINNAIRにて北極を通過した時にだけ発行される

Day #1 Monday, April 7
ミラノサローネ開催前日に到着。まずはミラノ市内の会場から廻ります。Milano Design Weekということで街は車道にまで人々が、音楽が溢れ、インスタレーションが散りばめられ、大変賑わっていました。最初に私たちが向かったのは、直接取引をさせていただいている、イタリアのVicenza(ヴィツェンツァ)で生まれたブランドSitia(シティア)がいくつかのブランドとともに共同展示をしている会場です。Brera(ブレラ)地区に程近いSolferino(ソルフェリーノ)にある”Caleido Social Hotel”という場所へは、事前にミーティングの約束をした際、担当の方より写真入りの丁寧な地図をいただいていたのでとてもスムーズに向かうことが出来ました。(ミラノでも殆どの移動にはGoogle mapを利用したのですが、この展示場については実際の地図と微妙な区画の差があったので、いただいた地図は多いに役立ちました。)

街中に案内コーナーが出来ている

Brera Design District
Sitiaの新作は、上質で鮮やかな生地が目を楽しませてくれる”Pave”ソファ、木製のテーブル付きのロッキングオットマン”Dondo”などとてもポップでカラフルな作品達でした。そして東京の地図をモチーフにしたラグやメタルロッドの曲線が美しいOutdoorチェア、”Japan”などを、代表のEmanuelさんが丁寧に説明してくれました。その後Sitiaチームの皆さんと近くの素敵なレストランでイタリアンディナーをいただきながら更なるミーティングを重ね、初日は賑やかに幕を閉じました。Sitiaは今年6月に東京ビッグサイトで開催される、”Interior Lifestyle Tokyo”に出展します!是非直に作品を観にいらしてください。


Sitiaのソファと東京の地図をあしらったラグ
Day #2 Tuesday, April 8
滞在2日目。いよいよミラノサローネが開催される当日となります。ホテル最寄りのP.Le Santorre Di Santarosa(サントッレ・ディ・サンタローザ)という駅に向かってみると、ここは路面電車の停車駅でした。とても可愛らしい黄色い電車が路を滑ってやってきます。こちらに乗り込み、Milano Certosa(ミラノ・チェルトーザ)駅で下車、駅構内のカフェに併設された売店で列車の切符を買います。Trenordという電車に乗ると、会場のあるRho Fiera Milano(ロー・フィエラ・ミラノ)まで1駅、4分で到着しました。

街中に線路が繰り広げられているミラノの路面電車

駅併設のカフェ、売店、キオスクで購入できる
駅から会場までの通路の両脇には例年お馴染みのArchiproductの広告、有名デザイナーの顔写真が並びます。しかしながら私たちが一昨年訪れた2023年には歩く歩道の内壁にも所せましと張り巡らされていたキービジュアルが今回は無く、今回のコミュニケーション・キャンペーン 「Thought for Humans. (人間のための思考) 」のキービジュアルが大きく掲げられたのをやっと見られたのは会場入り口の地上へと上がるエスカレーターの前に辿り着いた時でした。今回のイメージは写真家Bill Durgin(ビル・ダージン)氏によるもの。人間の身体とデザインとの結びつきに再び注目した彼の作品では、持続可能性と革新の象徴である木、金属、布、バイオプラスチックなどとの相互作用を表現しています。会場入り口では荷物チェックと、事前に購入しているチケットのQRコードの読み込みの為に人が溢れかえります。

今回のコミュニケーション・キャンペーンと
SaloneSatelliteの看板

“Thought for Humans. “
最初に訪れたブースはHall 03のNature Design(ネイチャー・デザイン)。Verona(ヴェローナ)にあるメーカーです。以前お客様をイタリアに案内した際に彼らのショールームに展示されていたチーク材の”根”のオブジェをお気に入りになり購入した経緯もあり、担当の方とお話して新作などを撮影させてもらいました。その名の通り「自然の宝物を大切にすることで自然を守り、時を刻む製品を作ります。」と謳う彼ら。その作品はどれもどっしりと地に根差した落ち着いた雰囲気で、自然への敬意を感じるものでした。
(☆Nature Designショールームご案内時の様子は是非こちらの記事をご覧ください。
「日本からボローニャを拠点とするイタリア地方都市のブランドショールームにお客様をご案内」
https://www.italia-kagu.com/message/brand-story/take-customers-to-brand-showrooms-in-bologna-etc/)


Nature Design “Blue”テーブル
次に、訪問を予約していたHall 22のTacchini(タッキーニ)へ。美しい飴色に光る、Studiopepeによる”TORII LOVE(トリイ・ラヴ) Dining Table”がいきなり目を引きます。そこに置かれたAfra and Tobia Scarpaによる”AFRICA(アフリカ)”チェアが絶妙にマッチしていました。奥の部屋にはマット仕上げのVerde Avocado(ヴェルデ・アボカド)大理石のテーブル”Clockwise”が大きな存在感を放っており、対で置かれた”KLOTSKI”チェアも非常にシンプルなデザインが、その上質さを際立たせていました。木製フレームに布張りの座面で、木そのものの色と落ち着いたグリーンのバージョン、ともに色合いがとても綺麗でした。これらはともにMichael Anastassiadesのデザイン。また、Joe Colomboによる”Additional System”、弊社IL DESIGNのプレゼンテーション・プレイスがある東京デザインセンターのデザインをしたMario Belliniによる”Le Mura”ソファの持つアイコニックなフォルムも見逃せないものでした。




ミラノサローネの会場面積は約40万平方メートル、凡そ東京ドーム8個分以上の大きさの敷地の中、中央の通路に沿って8つの大きな建物が左右に配置されており、それぞれが更に2つのHallに仕切られています。Hall内のブランド一つずつの展示場はStandと呼ばれています。一昨年のミラノサローネ参加の際、私たちはHallをまたぐ移動が多かった為、かなり疲弊が大きかった感がありましたので、今回は一つのHallを訪れた際は基本的にその中の展示Standを隈なく見切る!という方法に切り替えた為、比較的効率良く廻ることが出来ました。
続けてHall 22で廻った中で印象深かったStandをご紹介致します。ClassiCon(クラシコン)のSebastian Herknerによる”Bell Dining Table”が、ベースが大理石になった新バージョンで展示されていたのが圧巻でした。また、受付に並ぶ色とりどりのBell Side TableとBell Side Table Marble達もとても可愛らしかったです。また、弊社が直接取引しているmogg(モグ)の”SKYFALL”はステッチと張地がとても美しくアイコニックなチェアでした。


そして原色が眩しいStandが目に飛び込んできました。大きな金網の中に展示されています。gufram(グフラム)の”PRATONE”。柔らかなポリウレタンから手作業で作られた「草」だそうです。1971年にデザインされて以来、芸術的探究の限界に挑戦し続けている”シートデザイン”とのこと。体を投げ出して座る(!?)のだそうです。
同じく金網の中に、guframと背中合わせに同じく派手な原色を放って作品を披露していたのが、同じくイタリアン・ラディカル・デザイン・グループの傘下で、2023年に復活した革新的なブランドMeritalia(メリタリア)。アイコンであるGaetano Pesce(ガエタノ・ペシェ)デザインの”La Michetta”や”Colorado”などのソファはどこまでも”芸術”であり、子供も大人もわくわくするような大きなおもちゃのようなアートでした。



kettal(ケタル)の大きなStandは、今回Patricia Urquiola(パトリシア・ウルキオラ)がデザインしたとのこと。和を感じさせるローテーブル、木と大理石、涼し気なファブリックとの調和が美しいダイニング&アウトドアセット、そして新しいスタイルのワーキングスペースの提案などが統一感のある落ち着いたトーンで展開されていました。

kettalのStand

一つ一つ部屋のように区切られた空間に置かれていた

ふとした休息をもたらすような静寂

ブランドの信念を伝える
一昨年のミラノサローネ、昨年のコペンハーゲンでの3daysdesignに続いてminiforms(ミニフォームズ)のCEOにも、またお会いすることが出来ました。今年の新作ガラスローテーブルは”Striche”。miniformsの拠点であるヴェネツィアの言葉で”線”や”縞”を意味する言葉だそうです。ムラーノガラスで作られ、とても可愛いフォルムと色、そしてグミのような質感が魅力です。勿論人気のアイコン”SODA”(ソーダ)も健在でした!ちなみにこの”SODA”と類似したタイプのガラスローテーブルをあちこちで見かけました。例えばAcerbis(アチェルビス)の”Lokum”、Tonelli Design(トネリデザイン)の”Oasis”、maxdesign(マックスデザイン)の”ICE”など。






imperfettolab(インペルフェットラボ)は今回のミラノサローネでも独特な存在感を放っていました。昨年仙台市のデザインマンション、OASiS~Premier Garden Villaにお納めしたこちらのブランドの“NIDO”とも共通点のある”Beetle”や、このブランドの特徴である墨色の彫刻のような作品は圧巻でした。poltronova(ポルトロノーヴァ)もとても個性溢れるブランド。”Ultrafragola”ミラー/ランプや一度見たら忘れられない、大きなグローブとボールをモチーフにしたコンフォータブルチェアとプーフのセット、”Joe”。




Hall18のAPcollection(APコレクション)の動物のぬいぐるみ達が盛り込まれたチェアは他では見られないものでした…!彼らはベルギーのブランドで、チェアは一つ一つハンドメイドで、詰め物は主にペットボトルの廃棄物をリサイクルして作られます。3ヶ月かけて自信のチェアをカスタマイズすることも出来るそうです。一方、静かな色合いのARTISAN(アルティザン)の家具は”木”の素材が美しく映える、ほっとさせられるような質感を醸し出していました。
本日は会場をここで切り上げ、駅に向かいます。



ちょっとブレイク。
手洗所も各建物の端に沿っていくつかあるので困らない

夕方は、運河に近いSavona通りへ。弊社が直接取引をするブランド”TON”(トン)がいくつかのブランドと共に合同展示をしている会場で、担当者Radekさんを訪ねます。ミラノサローネの会場からミラノ地下鉄(赤い色の1線)で一本のミラノのシンボルである大聖堂、ドゥオーモまで出てから車で移動しました。会場は、Cappelliniの創設者でありアートディレクターのGiulio Cappellini(ジュリオ・カッペリーニ)がアートディレクションを行ったという”Next Place Hotel”という場所。TONの新しいポップアイコンである”822 Chair”がDeep Greenのカラーバージョンで展示され、室内装飾ともマッチしてポップ且つレトロ風味なアレンジが素敵でした。

石畳と路面電車のレールで地面はかなり凸凹がある



コーヒーをいただきながらRadekさんと有意義なミーティングの時間を持った後に会場を出て、少し運河に向かい歩くとARMANIの本社を発見。こちらの建物は安藤忠雄が建築を手がけたといいます。ARMANIの建物を両側に従えて静かに続く、背の高い樹木の並木道がとても綺麗でした。一方で、街中では若者達が楽し気に溢れてあちこちで催し物の開催中のようでした。盛沢山の滞在2日目でした。


レポート前編、お読みいただき誠にありがとうございました。次回、後編もミラノサローネの会場内と、フオーリサローネで華やぐミラノ市内の様子をお届けします。またお読みくだされば幸いです!